令和2年度第2次補正予算に、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、活動ができなかった文化芸術関係の個人や団体を支援するための支援策「文化芸術活動への緊急総合支援パッケージ」も組み込まれました。
「文化芸術・スポーツ活動への緊急総合支援パッケージ」は560億円計上され、そのうち「文化芸術・スポーツ活動の継続支援」が509億円となっています。
今回は、「文化芸術活動の継続支援事業」についてまとめます。
団体や、共同申請も対象ですが、個人(プロの実演家、バレエダンサー等)が申請する方法についてまとめたいと思います。
「文化庁のホームページをみたけどよくわからない」という意見をよく聞きます。
(実際に私も何度も読み返して、やっと理解できるようになりました。)
なるべく簡単に、わかりやすくまとめるよう努めます。
文化芸術活動の継続支援事業って?
この「文化芸術活動の継続支援事業」の目的は、「文化芸術関係者に対して、活動の継続に向けた積極的取組等に必要な経費を支援し、文化芸術の振興を図る」ことにあります。ですので、この補助金というのは活動経費に対するものです。
10万円一律に給付される「特別定額給付金」や、フリーランス等が受けられる100万円の「持続化給付金」は、使い途が限定されない「給付金」です。
これらの「給付金」と「補助金」は性質が異なるものだということをまずは、頭にいれておきましょう!
文化芸術活動の継続支援事業の概要
国内で活動する文化芸術関係者が、
①活動の再開・継続に向けた積極的な取組にかかる費用(つまりは活動経費)の2/3または3/4を補助。
【補助上限額 100万円】
②上記の①の取組と合わせて業種ごとの新型コロナウイルス感染症拡大予防ガイドラインに基づいた感染拡大防止の取組を行う場合、その費用を補助。
【補助上限額 50万円】
この補助金というのは、給付金のように「先に現金が渡されて、使い道は自由にしてください」というわけではなく、上記の取組を行うためにかかった費用を補助してくれるというものです。
わかりやすく言うと、基本的には先に上記の取組を行い、活動経費の支払い等を済ませます。その後、活動実績報告書や活動経費の領収書等の提出をし、支払った活動経費の補助をしてくれるので、現金が戻ってくるというイメージです。
事業全体の流れ
申請期間
第1次募集:令和2年7月10日 ~ 令和2年7月31日
第2次募集:令和2年8月 8日 ~ 令和2年8月28日
第3次募集:令和2年9月12日 ~ 令和2年9月30日
※予算の上限に達したら募集は締め切りです。
申請やその他の手続は、基本的にオンライン申請でLINEからのアクセスも可能です。
補助金対象として認められる期間
令和2年2月26日 ~ 令和2年10月31日
これは申請できる期間ではなく、補助金対象として認められる期間です。
上記の期間内で事業に発生した経費が補助対象の経費として認められます。
ですので、バレエダンサーの場合だと、リノリウムやバーなど購入した方いると思いますが、上記の期間内で購入していれば、補助経費の対象となります。自主練のための稽古場使用料や、トレーニング費用等も対象です。稽古着やバレエシューズ・トーシューズ等も経費として認められますよ。
補助の対象者
過去3年間で複数回の文化芸術活動を行う個人や文化芸術団体が対象です。
さらに個人の場合は、プロの実演家または、技術スタッフ等であることが条件です。
具体的には、不特定多数の観客に対して対価を得て公演などを行う者(つまりは、観客がチケットを買って見にいく公演に出演している者)・それらの公演等の制作に携わっている者です。
申請時に、個人で申し込む場合は、プロの実演家、技術スタッフであることの証明が必要になります。
「実演家等の申請条件の事前確認」を希望する場合は、統括団体等に依頼します。なぜこれを行うかというと、実演家等であることの事前確認を依頼することで、(承認の場合)統括団体等から確認番号の発行・通知が行われます。この確認番号があると、申請時に一部の書類が提出不要となるので、申請が楽になるということです。
※この確認番号がないと申請ができないというわけではないので、確認番号がない場合は提出書類が少し増えます。
バレエ団員の場合は、まず各バレエ団で確認をするのが良いと思いますが、日本バレエ団連盟から確認番号の発行・通知が行われることになるかと思います。
バレエ団によっては、ダンサーの確認番号の発行をまとめて日本バレエ団連盟へ依頼するところもあるかもしれませんね。
もし申請を考えている人の中で、経済産業省「小規模事業者持続化補助金」が支出されている場合は、こちらの事業には申請ができませんので、気を付けてください。
「文化芸術活動の継続支援事業」は4種類
1.【活動継続・技術向上等支援A-①】 上限額:20万円
2.【活動継続・技術向上等支援A-②】 上限額:150万円
3.【活動継続・技能向上等支援B 】 上限額:150万円
4.【共同申請】 上限額:1,500万円(10者の場合)
(小規模団体が主体となり、個人事業者と連携して公演等を行うこと。つまりは共同の主催者になるということ。)
※1と2は個人事業者向け。3は小規模団体向け。4は小規模団体+個人事業者向け。
上記の4種類から、自分で選んで申請を行います。
個人(プロの実演家、バレエダンサー等)が申請する場合、基本的には
1.【活動継続・技術向上等支援A-①】または、2.【活動継続・技術向上等支援A-②】
のどちらかを選ぶことになります。(どちらも申請する、重複申請はできません)
※今回、3.【活動継続・技術向上等支援B 】と4.【共同申請】についての解説は省きますが、個人については1.2.【活動継続・技術向上等支援A-① or Aー②】と4.【共同申請】との重複申請が1回限り可能です。
【活動継続・技術向上等支援A-①】 と 【活動継続・技術向上等支援A-②】の違いとは?
【活動継続・技術向上等支援A-①】というのは、標準的な取組を行う個人事業者向けで、補助金の上限額が20万円です。
これに対して、【活動継続・技術向上等支援A-②】というのは、より積極的な取組を行う個人事業者向けであり、補助金の上限額も150万円となります。
積極的な取組とは?
「積極的な取組」とは、感染症対策を踏まえた新たな練習方法の確立、動画収録・配信、会計処理に関する講習の参加等が文化庁ホームページに例として挙げられています。
申請時の具体的な違いとは?
申請時には、指定された入力事項を記入しますが、【活動継続・技術向上等支援A-②】を選択した場合は、入力事項とは別に、「事業計画書」の提出が必要になります。
ですので、より簡単に申請をしたいという場合は、上限は20万円となりますが、【活動継続・技術向上等支援A-①】を選ぶと良いでしょう。(上限20万円でも十分な気もします)
【活動継続・技術向上等支援A-①】を選んで、上記の「積極的な取組」を行っても問題はありません。「この事業の趣旨・目的に沿うものであれば、申請者の主体的な判断で実施されるものも対象になりえます」と記載もされています。
補助の対象となる取組
1.活動の再開・継続に向けた積極的な取組
①国内外の観客、参加者等の回復・開拓
②活動の継続・再開のための公演・制作方法等の検討・準備・実施
③雇用契約の明文化等の経営・ガバナンスの近代化
2.上記の1.の取組と合わせて、業種ごとの新型コロナウイルス感染症拡大予防ガイドラインに基づいた感染拡大防止の取組
具体的な例が、文化芸術活動の継続支援事業事務局「令和2年度 文化芸術活動の継続支援事業 募集案内」に記載されています。(画像参照)
こういった取組にかかる活動経費を補助してくれるのです。
では、実際どれくらいの額を補助してくれるのでしょうか?
2/3補助される場合と、3/4補助される場合の違いは?
ICT活用とは?
認められる経費に制限はあるのか?
これらについて解説します。
補助金の額
補助金の額というのは、活動経費を全額補助してもらえるというわけではありません。
基本的には、活動経費の2/3が補助されます。
活動経費のうち1/6がICT活用の取組にあてた経費である場合、2/3 ⇒ 3/4と補助率が上がるのです。
ICT活用とは、Information and Communication Technology(情報通信技術)の略です。新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、通信技術を活用した取組を行うことで補助率もあげてくれるということですね。ICT活用の取組の例は、上の画像の(★)を参考にしてください。
具体例を挙げてその違いを見てみましょう
補助の対象となる取組(上記と同じものです)
1.活動の再開・継続に向けた積極的な取組
①国内外の観客、参加者等の回復・開拓
②活動の継続・再開のための公演・制作方法等の検討・準備・実施
③雇用契約の明文化等の経営・ガバナンスの近代化
2.上記の1.の取組と合わせて、業種ごとの新型コロナウイルス感染症拡大予防ガイドラインに基づいた感染拡大防止の取組
では例えば、バレエダンサーが【活動継続・技術向上等支援A-①】(上限20万円)を選択して、「1.②活動の継続・再開のための公演・制作方法等の検討・準備・実施」と「2.上記の1.の取組と合わせて、業種ごとの新型コロナウイルス感染症拡大予防ガイドラインに基づいた感染拡大防止の取組」を行ったことにします。
パターン① ICT活用の取組を含まない場合(補助率 2/3)
「1.②活動の継続・再開のための公演・制作方法等の検討・準備・実施」にかかった経費
・演目に関する資料購入(本、DVD購入など) 30,000円
・指導謝金 100,000円
・稽古場借料 60,000円
・練習参加、演目視察等の交通費 50,000円
【取組の合計金額: 240,000円】
※240,000円の2/3は、160,000円
「2.上記の1.の取組と合わせて、業種ごとの新型コロナウイルス感染症拡大予防ガイドラインに基づいた感染拡大防止の取組」にかかった経費
・感染症対策の消耗品購入(アルコール消毒液、マスクなど) 20,000円
【取組の合計金額 20,000円】
【この場合の補助金額 160,000円+20,000円=180,000円】
パターン② ICT活用の取組を含む場合(補助率 3/4)
「1.②活動の継続・再開のための公演・制作方法等の検討・準備・実施」にかかった経費
・演目に関する資料購入(本、DVD購入など) 30,000円
・オンライン等による指導謝金 100,000円
(オンラインなのでICT活用!合計240,000円のうち100,000円は1/6以上なので補助率アップ!)
・稽古場借料 60,000円
・練習参加、演目視察等の交通費 50,000円
【取組の合計金額: 240,000円】
※240,000円の3/4は、180,000円
「2.上記の1.の取組と合わせて、業種ごとの新型コロナウイルス感染症拡大予防ガイドラインに基づいた感染拡大防止の取組」にかかった経費
・感染症対策の消耗品購入(アルコール消毒液、マスクなど) 20,000円
【取組の合計金額 20,000円】
【この場合の補助金額 180,000円+20,000円=200,000円*】
*200,000円は上限
この様に補助率が上がると、補助金額もだいぶ変わります。ICT活用の取組を交えて行うと良いでしょう。
補助対象の経費と対象外の経費
補助対象の経費
補助の対象となる経費は下記の8つのみです。
それ以外の経費は補助対象なります。
経費に関しての注意は、対象となる経費が決まっているという点です。
具体例が「令和2年度 文化芸術活動の継続支援事業 募集案内」に記載されていますので、掲載します。(下記、画像参照)
補助の対象外となる経費
上記にあげた8つの経費以外は、補助の対象とはなりません。こちらの具体例も、掲載しておきます。
申請方法について
申請においては、補助金申請システム等を活用し、オンライン申請になります。LINEからのアクセスも可能です。(オンライン申請の詳細は、申請期間開始時に発表されます)
入力事項の記入イメージは、下の資料の通りです。
※「活動経費」の記入欄がありますが、申請の段階では金額も確定していないので、大まかでいいそうです。(事務局に電話で問い合わせしました)
審査前の準備
まず初めにやることは、①令和2年2月26日 から今日までの活動経費として認められるものの領収書・レシート探しからです。リノリウムやバーを購入した人、PC関連を購入した人、それらは高額な経費ですよね。領収書探してみてください。万が一見つからない場合は、支払いがわかる領収書の代用となる資料を用意しておきましょう。
次は、②どのような取組を行うかを考えましょう。令和2年10月31日までが対象期間ですので、それまでにどのような取組を行うか、ICT活用の取組をおこなうのかどうかを決めます。
その後、③その取組にかかる経費をざっと計算し、【活動継続・技術向上等支援A-①】(上限額20万円)で申請するのか、【活動継続・技術向上等支援A-②】(上限額150万円)で申請するのか決めます。
あとは申請期間を待って、オンライン申請をするのみです!
(審査が通ったあとの流れはまた次回の記事に・・・)
おわりに
長々と解説してきましたが、「文化芸術活動の継続支援事業」の概要、申請の準備・方法についてご理解いただけたでしょうか?
文化芸術活動の継続支援事業事務局「令和2年度 文化芸術活動の継続支援事業 募集案内」に詳しく記載されていますので、ぜひご覧ください。(この記事はこちらの資料を基にまとめています)
「文化芸術活動の継続支援事業」は課税対象となります。ですが、支払った活動経費に対して補助される(感覚的には、経費で支払ったお金が戻ってくる)ので、税金が増えてしまうのでは?といった心配は基本的にないでしょう。
私は「文化芸術活動の継続支援事業」への申請をおすすめします。
「この補助金を有意義に活用し、文化芸術の復興を図る」
今私たちに求められていることなのではないでしょうか。
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